夜道

4/16 土

朝、起きられない。やたら予定を詰めてしまったのでうなりながら支度をする。12時頃に家を出る。

簡単な手続きをしたり、初めての場所に行くことがかなりの重荷になるので一日にまとめてこなす。時間に追われて、気持ちが入り込む隙間を与えないのがいい。学生証の受け取りに大学まで行き、その後美容クリニックを2軒まわる。美容クリニックってどこも混んでる。なんとなく美意識が高くなった気分にもなる。ピアスの穴を開けただけだけど。

映画の時間までと喫茶店に入る。隣の席の大学生の男女3人組が就活の話をしている。耳に入ってくる会話を聞きながら、自分に与えられただけの決められた話をして、それに相手は決められた返しをするのって会話なんだろうかと思う自分が、傲慢で救いようのないやつに思えてきて嫌になる。スムーズに流されていく会話が時々とても醜悪に思えるのは、私がその醜悪さをたっぷり抱えた人間だから。

19時すぎに映画館に移動する。二度目のドライブマイカー。親密さを見てやられてから、濱口監督の映画のなかへ帰ってしまいたい気持ちがずっとあった。弛んだシーンの一切ない映画だと改めて思う。計算され尽くした映像の言葉の音のなかに入っていくのは心地良いし緊張する。ずっと緊張していたいと思う。

映画館から出た時、新宿の街ははっきり輝きを増して見える。私は映画の素晴らしさと世界の美しさと、どちらも知ってるんだ。映画を見終えて歩くこの夜の時間が永遠に続けば良い。